「新学期」(テニスの王子様/プリガムレッド)
新学期になった。私は神奈川にある立海大付属中学校に通っている極々普通の生徒だ。
そこらへんいる、生徒Cくらいの凡人だ。もしかするとサブ以下、いやモブ以下かもしれない。
というか、そういうポジションを希望する。
そんな私は、今まで主要人物を避けてきた。サッカー部のエースだとか、バスケ部の主将とか
なんかそこらへんの輝いてる人達だ。
なんでかって?そりゃ、面倒なことに巻き込まれない為さ。
そんなこんなで健気に学校生活を送ってきた私なのですが、どうやら神は
私を見放したようです。ひどい。
「よっ、今日もシケたツラしてんなぁ!」
「おはようさん」
「・・・・・」
颯爽と私の目の前に現れた赤髪と銀髪。爽やかなはずなそれが、いまはただ忌々しい。
赤い髪の方は、たぶん全国の中学生の中でコイツだけじゃないだろうか。
名は丸井ブン太という。見た目はかなりイケてる(らしい)けど、私にとっては天敵でしかない。
そして、その横には銀髪・・・仁王雅治。こっちもかなりのイケてる(らしい)メンズだ。
言い方が古い?わざとです、気にしないでください。
一般の女子生徒ならば、朝にこの二人から声をかけられるだけで昇天するだろう。
だけど、私は違う。憂鬱で仕方ない。できることならば他人のフリをしたい。
なぜ、ここまで私は鬱なのかというと。
私は新学期になり、少なからず気持ちは浮ついていた。3年生ということで、友人と
3年連続同じクラスになれるかな、とかそんな希望を抱いていたわけです。
まあ、その希望は叶ったんだけど。もう一方は、見事に裏切られた。
輝いている主要人物と接触しない、ということだ。
何の因果か、彼の有名な全国出場常連(しかも優勝とかそこらへん)をしているテニス部の
レギュラーである丸井くんと仁王くんと同じクラスになった。
いや、まださ、真田くんとか柳生くんとかジャッカルくんとかだったら良かったよ。
女性関係が酷く無さそうだからね。
なんで、よりによって丸井くんと仁王くんなんですか。仁王くんに至っては、中学生
だというのに彼女の話とか強烈なんですけど。よくない噂をよく聞くんですけど。
うん、でもさ。まだ同じクラスなだけだったらいいよ。
どういうわけかさ、その二人に絡まれるんですよ私助けてくださいヘルプミー!
「おいおい、無視とか酷くね?」
「・・・・いや、べつにそういうわけじゃ」
「まあまあ、ブンちゃん。きっと考え事してたんじゃろ。のう?」
「ああ、うん、まあ」
「なに、今日の昼飯のこととか?」
「ブンちゃんじゃないきに、違うじゃろ」
・・・どうでもいいよ!いちいち喋りかけないでください女子の視線が怖い。突き刺さってる。
突き刺さる通り越して貫通しそう。
いつのまにやら私の席の前の座席に腰掛けている二人。そこは前岡さんと秋川くんの席です。
当たり前のように会話してるけどね、私は一刻も早くこの場から去りたい。
どうやってこの場からきり抜けるかを必死で考えてると、廊下の方がざわついていることに
気づく。・・・っく、間に合わなかったか。
ざわつく声(主に女子の)に、そろりと目線を教室のドア付近にやる。
・・・ああ、やっぱりか。
「におせんぱーい!まるせんぱーい!!」
「赤也てめえ、丸井だっつの!」
「ブンちゃんにはピッタリじゃろ」
「はあ?!」
ニコニコしながらこちらへ近づいてくるのは、後輩(だと思われる)人物。
切原くん、だったと思う。この人もテニス部で、やたらモテる。上級生にもモテるらしい。
そんなやつが何故このクラスへやってくるか?答えは簡単だ。丸井くんと仁王くんと仲良しだからだ。
そして、それの真似か何か知らないけど・・・私にもやたら懐いた。
「あ、せんぱい!おはよっす!」
「・・・・ああ、うん。おはよう」
「あれ、せんぱい髪切りました?!」
「え、いや切ってない、けど」
「あっれ、マジすか?おっかしいな」
必死に首を傾げてる切原くんには悪いけど、マジで切ってないですよ。1ミリも切ってない。
私を凝視する切原くん、必死にその視線から逃れようとする私、そんな私の髪の毛をいじっている
仁王くん、そしてそんないじられてる私を写真に撮ろうと携帯を構えてる丸井くん。やめれ。
周りからの女子の視線が痛い。
男子からの奇妙なものを見るかのような視線に困り果てる。
そして、友人からの生暖かい視線に泣きたい。
「せんぱい、今日もいっしょにお昼食べましょうね!」
「あ、赤也てめぇ抜け駆けすんなっつの」
「このメンバーでいいじゃろ、のう?」
私に振らないでください。
こんな日々が卒業するまで続くのだろうか。どうかこの3人が私に飽きてくれることを願う。
・・・今のところ、その見込みは限りなく0に近いけど。