「ひなたぼっこ」(HUNTER×HUNTER/アダルトリオ)
そうだ、ひなたぼっこをしよう。
何故こんなことを思ったのかは私にも分からない。多分あれだ、神のお告げみたいな。
ここ最近働きっぱなしだったし、たまにはゆったりしてもいいよね。
そう自分に言い聞かせるようにして、思いついたからには即行動。
ソファからクッションを引っ張り出し、大きな窓の傍に寝転ぶ。
ちょうど窓は南に位置するから、お昼時である今日、しかもお日様が顔を出している今日は
絶好のひなたぼっこ時だ。
「おおう、あったかい・・・」
独り言のように呟き、クッションに顔をうずめる。
ぽかぽかと日の光があたたかい。今日はなんて良い日なんだ。最高のひなたぼっこ日和だ。
家の中は静かで(まあ、一人暮しだし当たり前か)、外からはチュンチュンと雀の声が聞こえる。
ああ、なんて平和なんだ。春の陽気にあてられ、うとうとし始める。
今日は仕事入ってないし、このまま寝てしまおうか。
「ねえ、何してるの」
「・・・今日は休業日です」
「年中無休24時間営業がモットーじゃなかったっけ」
「・・・イルミ」
「うん」
どうやら神は私に休息を与えないつもりのようだ。くそう、神のお告げではなかったのか。
クッションから顔をあげれば、すぐそばには見慣れた黒い髪。相変わらずサラサラだな。
私の横にしゃがみ込み、こちらを覗いているのはお得意様のイルミ。相変わらず能面だな。
当たり前のように私の家にいるけど、ドアも窓もちゃんと鍵かかってるんだけどな。
ゾルディッククオリティか、そうなのか。まあ、そこはもう突っ込まないけど。
相変わらず私のほうをガン見しているイルミ。・・・そんな風に見たって今日は仕事しないぞ。
「何してるの」「ひなたぼっこ」「なんで」「ひなたぼっこ日和だから」「ふーん」
ふーん、て。興味ないなら聞くなよ、と突っ込みたくなるのは私だけではない筈だ。
しばらく黙っているかと思ったら、急に視界からイルミが消えた。え?
「じゃ、俺も」
「はい?」
「別に今日は依頼しに来たわけじゃないから」
「いや、うん。そうじゃなくて、これどういう」
「ほら、ひなたぼっこするんでしょ?」
違うの?と首を傾げるイルミは男とは思えないくらい可愛いけど、いや、そうじゃないって。
先ほどまで私の横にしゃがんでいたイルミは、いつのまにやら私の横に寝転がっていた。
私の横(窓際じゃない方)に、頬杖をついてコチラを見るようにして寝転がっている。
いや、「違うの?」じゃなくてね、なんで君まで寝る必要があるんですか。ホワイ!!
私がどうしたものかと頭をフル回転させてるのを余所に、イルミは呑気に欠伸をしている。
あ、イルミも欠伸するんだ・・・じゃない。違う違う。
イルミは分かっているんだろうか、自分自身の面が一般人とは違うということに。
ぱっと見はかなり怖い(特に目が)けど、ふつうに整った顔をしている。普通にモテると思う。
その上体格よくて、髪は男なのにサラサラキューティクル・・・。しかも似合ってるし。
そんな人がね、横にしかも近距離とか緊張しないわけないんですよ。
こんなんじゃ寝たくても寝れないよ。
相変わらずコッチを見ていて「寝ないの?」って首を傾げるもんだから、もう諦めた。
なんか頭なでてきたり、頬つついたりしてくるけど気にしないよ。
「おやすみ」と半ば呟くように言う。そして私は改めて夢の世界へ旅立とうとした。・・・だが、
「イルミばっかりズルイじゃないか」
「・・・ヒソカ」
「やあ」
やけに粘着質な、楽しそうな聞きなれた声が私を夢の世界から阻んだ。
目をあけると、ニヤニヤとしてるいつもの顔がこちらを見ている。・・・次から次へと何なんだ。
やけに楽しそうな顔(まあ、いつもなんだけど)をしているヒソカは、イルミとは反対側の
私の隣に立っていた。よく見れば窓が開いている。けど、鍵は壊れていないし割れてもいない。
怪訝そうな顔をした私に、「奇術師に不可能はないの」といつだったか聞いたような台詞が
聞こえてきた。奇術師なら何でもありなのかよ・・・そうなのかよ・・・。
「ヒソカ、帰ってくれない。コイツは俺といるんだから」
「ヒドイなあ、イルミ。ボクだって彼女といたいのに」
その瞬間、鋲とトランプが飛んだ。言葉のとおり、空を飛んだというか切ったというか。
目線を上にやれば、いつのまにやら戦闘態勢に入ったヒソカとイルミ。殺気がすごいんだけど。
ひっそりと自分の念能力である結界を自分に張る。ヒソカとイルミが自らの武器を手にし、
ジリ、と動いたその瞬間。
「駅前の新しい店のプリン買ってきたんだがどうだ?」
そう言って、白い箱を手に部屋に入ってきたのはお得意様2号であるクロロだ。
なんでこう、君たちはタイミングがいいんだろうね。なに、打ち合わせでもしてきたの?
というかクロロもどこから入ってきたの?盗賊クオリティなの?
今日は髪を下ろしていて、爽やかな好青年スタイルなクロロ。ヒソカとイルミを見つけるなり、
眉間にシワを寄せた。
「・・・なぜお前らがいる」
「俺が最初にここに来たんだよ。クロロもなに、ちゃっかり手土産?」
「俺は彼女とプリンを食べるために来たんだ。前々からの約束だったからな」
「じゃあ、ボクもそうだよ。前、遊びに行くねって言ったし」
「どうせヒソカ、許可なんて得てないだろ?」
「さあ?」
ギスギスとした空気に更に輪が掛かった。クロロからも凄い殺気がとんでくる。
プリンの入っているだろう箱を机に置くと、スキルハンターを取り出す。え、マジですか。
誰からともなく、戦闘が開始された。
私はといえば、クロロが持ってきてくれたプリンを結界の中で食べていた。
とりあえず、家壊さないで欲しい。・・・プリン美味しい。